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タイトル『○に近い△を生きる』
著者鎌田實 発行所ポプラ社 発行日2013年9月18日 定価780円+税

 先日、病院の診察日で2時間かけて下剤を飲まなければならず、そのストレスを少しでも緩和できたらと思い、図書館で借りてきた本です。
著者は有名な医師の鎌田先生です。内容は正論や正解にしばられず、別の見方や別解を持てれば生きやすくなりますよというものです。
 昨年まで大学のキャリアセンターに勤務し、多くの学生と接してきた私も同じ様な思いでいます。テストの正解にはほとんど別の正解はなく、唯一の正解が多いです。しかし、私たちの周りには様々な意見や現象がみられ、時には理解しがたいものが沢山あります。それが社会です。それを前提として、たとえ意見が違ったとしても、智恵をだしていかなければなりません。それは確かに難しいことですが、一方、だからこそ面白いのです。
就職活動中の大学生のみなさんに読んでほしい一冊です。(2014/02/03)


タイトル『想像ラジオ』

 著者いとうせいこう 発行河出書房新社 発行日2013年3月11日 定価本体1400円。

 今日、『想像ラジオ』を読み終えた。この本が発売になることを知ったのは新聞の紙面だった。そこには著者の創作に至った経緯と生み出してからの葛藤が語られていた。その著者の内面のつぶやきが正直に、謙虚に感じ、共感を覚えた。それから後にテレビで著者が市民の人たちと語り合うのを観た。そこでも、著者は市民の方と理解し合うことに耳を傾けていた姿が印象的であった。このとき、買って読んでみたいと思った。定年後、本はできるだけ買わずに図書館を利用してきたが、この本だけは手元に置きたいと強く思ったのである。
私の心にいまだ、東日本大震災のことが鉛の塊のようになって住み着いている。鎮魂と罪の塊である。鎮魂は亡くなられた方と亡くした方へ向けられたもの。罪は私自身に向けられたもので、3.11以来、自分は一体全体、なにができるのか、どう向き合って生きていくのかといった宿題みたいなもの。そんなときに、この本に出合ったことに感謝している。
 話の展開は、生死の境目にいる主人公が木の上に引っかかって、死者と生きている人の声に耳を傾けようとしているものである。そこでは想像ラジオのDJとして、他者の代弁者の役割を務めている。テーマが重苦しいものであるだけに、軽妙なウイットに富んだ舞台を演出してくれた著者の奥ゆかしさを感じて快い。
 この本を読みながら、ある本を想い出していた。死生学が専門のアルフォンス・デーケン先生の『よく生き よく笑い よき死と出会う』(新潮社)である。また先生が提唱している「悲嘆のプロセス」(悲しみを癒すためには、幾段階のプロセスを踏むというもの)というものも想い出した。もう一度、書架から取り出して読んでみたい。
 あの日以来、人生観が変わったという友人の声を耳にしたことがある。人々は、多かれ少なかれ、また、意識しているか無意識を問わず、自分の生き方に影響を受けていると思う。今の自分の気持ちを誰かに、将来にわたって、知らない世代にも語り継ぐ責任が私たちにあるように思う。
(2013/11/21)

タイトル『ニーチェの言葉』
 
著者フリードリヒ・ニーチェ 白取春彦編訳 発行元ディスカヴァー・トゥエンティワン
 発行日2010年1月15日第1刷 2012年8月5日第41刷 定価1700円+税
 
 8月に2巻となったのを機に購入した。以前から気になっていた本で帯によると110万部売れているらしい。ニーチェはもともと哲学者で昔読んだ本は難解で、それ以来避けていた。ところが、今回のものは超訳と副題にあり、とてもシンプルにまとめられているので読みやすい。
 まだ読み始めている途中であるが、1巻目の最初のページに「初めの一歩は自分への尊敬から」とあったので、これだけでも買って良かったと思った。というのは、秋の授業も始まり第1回目の就職セミナーで学生に是非伝えたいと思ったからである。日頃学生と接していて、自分を否定するような学生を多く見てきた。そのような学生に、奇跡的のようにこの世に生を受けて、いま生きている自分、欠点もあり能力も足らざる部分があるにせよ、総体としての自分を愛しんで欲しいと言い続けてきた。まさに、私の想いと言葉こそ違うが同じことが書かれていたのである。
 そして、これからまさに就職活動本番を前にして不安な気持ちの3年生に先週伝え、エールを送った。(2012/09/22)

タイトル『たとえば君』

 著者河野裕子・永田和宏 発行元文芸春秋 発行日2011年7月15日 定価1400円+税
 
 副題に「四十年の恋歌」とある。短歌の歌人永田さんは同じく歌人の妻裕子さんを2010年8月12日乳がんで失くした。裕子さん64歳であった。短歌にさほど興味があったわけではないが、テレビ放送の番組で河野裕子さんという女性の生き方に感銘を受け、河野さんの著書を読んできた。そして、今回、たまたま職場の図書館でこの本に出あった。
 裕子さんが亡くなられてから、ご主人の和宏さんが編纂したものだ。河野さんという女性を夫の目線で書かれているので、さらに河野さんの人物像が鮮明に浮かび上がった。
 夫婦の形、暮らし方に正解はもちろんなく、どの夫婦にしても全部違うことをあらためて感じさせてくれた。ふたりの間を行き交う短歌は夫婦の会話である。男と女の違いを感じながら読むのも面白い。
 河野裕子さんの歌で、私が気に入っているものがある。それは、「じゃがいもを買ひに出る。この必然が男には分からぬ」 (2012/06/27)

タイトル
『ハーバードの人生を変える授業』
 著者タル・ベン・シャハー 発行元大和書房 発行日2011年2月15日 定価1600円+税

 
いま、大学の教育の質が問われている。学生にとって魅力ある授業が展開されているか、あるいは社会からの要請に応えている教育が行なわれているか、ということである。
 そのヒントになりそうな本に出会った。教育現場に携わらなくても、日々の生活のヒントにもなる。
 本の中で、特に目にとまったものを紹介しよう。
 ひとつは、「すべてをシンプルにする」というものである。私たちはたくさんのことをやりすぎて、生活を忙しくしており、その結果、まわりの幸せに気付かないらしい。なにか自分のことを言われているようで納得。では、どうすればいいのか。「しなければならないこと」を減らしたらいいようである。
 もうひとつは、「いいこと探しの名人」になりなさい、「あら探しの名人」になりなさんなというものである。就職活動で不安にさいなまされている学生に読んでほしい(2011/05/14)


タイトル『ハッピー・リタイアメント』

 著者浅田次郎 発行元幻冬舎文庫 発行日2011年8月5日 定価600円+税

 新聞のPR文を見て、買った。直接的な動機は、著者の名前とタイトルに惹かれたためである。僕の第二の職場もそろそろ定年が見える頃となった。近頃、定年という言葉の響きに哀しいとかの感情がわかず、むしろ、一区切りつけて次のステップが始まるという認識である。近頃と書いたのは、昔は、そうは思っていなかったということである。まだ働きたいのに辞めざるを得ないとか、収入がなくなるのはとても不安だとかという思いであった。それが、最近の心境として、まさにハッピーに退職して、次の仕事に向かうという気持ちが強い。そんな思いからこの本を買った。
 PR文からして、楽しそうな本であることはなんとなく感じたが、読み始めてすぐに、それが間違いなかったと安心した。テンポ良く、肩に力が入らず読めるのは心地よい。例えて言えば「浅田マジック」、全開である。
 内容は、官僚の天下り先での仕事ぶりがユーモアたっぷりに描かれている。官僚経験のない僕にとっては、官僚世界のへんてこりんな可笑しさに、引きこまれた。この本に副題を勝手につけるすれば、「人間万事塞翁が馬」というところか。
 60歳の還暦を迎えた時は、なにか変な感慨にふけったが、それも数年過ぎると、そんなことがあったと懐かしさを憶える。秋の夜長に、この本を読んで、さて、次はどうしようかと思いを巡らすのも悪くないと思う。(2011/09/23)


タイトル 『天国のキャディ』
 
 副題は「世界で一番美しいゴルフの物語」である。著者ジョン・フェイスタイン 発行所日本経済新聞社 発行日2006年10月24日
 新聞で紹介されいたのに興味がわき、図書館にいったが、在庫がなく、県内の他の図書館に手配していただき、正月読むことができた。
 世界のゴルファーといってもよいトムワトソンの専属キャディとして30年間活躍したブルース・エドワーズの物語である。ご存知のようにゴルフは自分との闘いであり、何事も自己責任のスポーツであると言われている。しかし、試合のときに自分以外の助け人としてプレイヤーの味方となってくれるのがキャディである。コースを、グリーンをどう攻めるべきか助け舟を出せるのは唯一、キャディである。しかし、プレイヤーも結果が伴わないと、キャディのアドバイスが間違っていたと思ったり、自己コントロールがつかなくなり、ますます悪い結果になるのだ。
 トムワトソンとて、そのような気持ちになったことがあるらしい。しかし、信頼の絆に結ばれていた二人は、本音で意思疎通を図ってきた結果、30年間も苦楽を共にしてきた。そんな二人にある日、別れがきた。ブルースがALSという病気になったのだ。筋委縮性側索硬化症という、筋肉が着実に落ちて行く不治の病になったのだ。そして、発病から1年4カ月で帰らぬ人となった。ブルースとワトソンの友情と生き方に感激した。(2011/01/16)


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